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2026/08/18

タツキの物語(俊の記憶) 第8回

8章 俊の回想(18歳)

これがタツキの物語。

障害があってもなくても、タツキはただ“タツキ”として世界を動かした。

あいつほど人を笑わせて、泣かせて、走らせた子を僕は知らない。

あいつがいた時間は、本物だった。

タツキはいなくなったけど、僕たちの心の中にずっと生き続ける。

どんな人も代わりになれる人なんていない。

一人ずつ別の人格をもっていて、そしてその人格で周囲に影響を及ぼす。

それが僕が18歳で知った大きな学びだった。

だから僕は、これからもタツキのことを胸に抱いて生きていく。

 

そして僕は今でも、ときどき思う。

あの日のタツキの笑い声は、きっと世界でいちばん強かったと。

今でも耳の奥で聞こえる。

「しゅんーーー!!」

今でもあれが、僕の世界のいちばん大事な音だ。

 

でも、タツキがいなくなってから、僕はひとつだけ強く思うようになった。

人は、能力や年齢や「できる・できない」で価値が決まるんじゃない。

その人がそこにいることで、場の空気が変わる—— それだけで、世界を動かすことができる。

タツキは、何か特別なことができたわけではないし、むしろできないことが多くて、みんなの手を煩わせたと思う。

でも、あいつが笑えばみんなが笑った。

あいつが泣けばみんなが駆け寄った。

あいつが富士山を作れば、食堂が祭りになった。

社会は、本当はこういう「人格の力」をもっと大事にできるはずだ。

障害があるとか、発達が遅れているとか、そういう言葉で人を分類するんじゃなくて、

その人が持っている「場を変える力を見られる社会であってほしい。

僕たちが過ごしたこの施設は、その小さなモデルだった。

誰かの「できない」を補い合って、誰かの「好き」を中心に生活が回って、

誰かの「笑い声」が共同体の空気を作る。

タツキは、その中心だった。

だから僕は、これからの社会が、あいつみたいな子を「保護する」だけじゃなくて、

一人の人間」としての良さを見られるようになってほしい。

あいつが教えてくれたのは、「人は役割で生きるんじゃなくて、関係で生きる」ということだ。

僕はそのことを忘れずに生きていく。 タツキの笑い声と一緒に。

2026/08/18

タツキの物語(俊の記憶) 第7回

7章 翌朝の静けさ(発熱〜病院〜別れ)

朝の食堂は、昨日の片づけのおかげで綺麗になっている。

みんながそれぞれの席に座り始める。

壮太(10)が最初に気づく。

「……あれ? タツキ、来てない。」

俊(18)はパンをかじりながら眉を上げる。

「珍しいな。いつも一番に走ってくるのに。」

エミ(14) 「昨日、すごく暴れたもんね……疲れちゃったのかな。」

サキ(17) 「寝るとき、完全に電池切れてたよね。」

ハルト(16) 「音がしない……まだ寝てるのかも。」

カヨ(14) 「タツキくんがいない朝って、なんか静か……」

ヤンチャ君(24)はコーヒーを飲みながら言う。

「まあ、騒いだ翌朝はよくあるよ。全力で暴れて、全力で寝る。タツキの“翌朝ルール”だ。」

俊 「昨日のあれだけ暴れたら、そりゃ寝るよな……」

壮太は少し心配そうに立ち上がる。

「タツキ、起こしてこようか?」

ヤンチャ君 「いや、いい。今日はゆっくり寝かせてやれ。誕生日の翌朝くらい、好きにさせてやろう。」

俊 「そうだな。 あいつは寝てるときが一番かわいいし。」

エミ 「でも、起きたら絶対お腹すいてるよね。」

サキ 「うん。 起きた瞬間『タツキ、たべるーーー!!』って言うよ。」

みんなが笑う。

食堂は静かだけど、その静けさは“心配”じゃなくて“余韻”。

昨日の騒ぎが、まだ部屋のどこかに残っているような空気。

 

「タツキ、昨日すごく楽しかったんだね…… 起きたら、またみんなでごはん食べよう。」

俊 「起きたら絶対走ってくるぞ。 『しゅんーーー!!タツキ、おきたーーー!!』ってな。」

ヤンチャ君 「そのときは、誰か捕まえろよ。俺はコーヒー飲んでるからな。」

みんな笑う。

 

午前中はまだ「寝坊かな?」で済んでいた。

でも、昼になってもタツキの姿が見えない。

壮太(10)が最初に気づく。

「……タツキ、まだ来ない。」

俊(18)はスプーンを置く。

「さすがに珍しいな。あいつ、いつも昼前には絶対起きるのに。」

エミ(14) 「昨日、すごく暴れたから……疲れちゃったのかな。」

サキ(17) 「でも、昼まで寝るのはタツキくんにしては長いよね。」

ハルト(16) 「音がしない……部屋、静かだね。」

カヨ(14) 「なんか……心配になってきた。」

ヤンチャ君(24)は眉を寄せる。

「……様子を見に行こう。誕生日の翌日は疲れてることもあるけど、昼まで起きないのは変だ。」

俊 「俺が行く。」

壮太 「僕も行く。」

 

廊下は静か。昨日の騒ぎが嘘みたい。

俊がドアの前に立つ。壮太がそっとノブに手をかける。

「タツキ、入るよ……?」

ゆっくりドアを開ける。

屋の中は薄暗い。タツキは布団の中で丸まっている。

顔が赤い。呼吸が浅い。目が半分しか開いていない。

壮太 「タツキ……?」

タツキ 「……壮太…… タツキ……ねむい……」

俊はすぐに膝をつく。

「おい……どうした。昨日の疲れだけじゃないな……」

タツキは俊の服を弱く掴む。

「しゅん…… タツキ……あつい……」

俊 「熱か……」

壮太は慌ててタオルを持ってくる。

「タツキ、汗いっぱい出てる……」

俊はタツキの額に手を当てる。

「……熱い。 熱出してる。」

ヤンチャ君が後ろから来る。

「誕生日で暴れすぎたのもあるが…… これは“ただの疲れ”じゃない。

施設の職員に伝えた方がいい。」

 

エミ 「タツキくん……大丈夫かな……」

サキ 「昨日あんなに楽しそうだったのに……」

ハルト 「声が弱い……心配だね。」

カヨ 「どうしよう……」

俊はタツキの手を握りながら言う。

「大丈夫だ。俺たちがいる。」

タツキ 「……しゅん…… タツキ……ねむい……」

俊 「寝てていい。俺たちがそばにいるからな。」

俊はすぐに判断する。

「これは……ただの疲れじゃない。ヤンチャさん、医者呼んでくれ。」

ヤンチャ君は即座に動く。

「わかった。すぐ連絡する。」

10分ほどで、施設の嘱託医が駆けつける。

みんなは廊下で緊張して待つ。

医者 「熱が高いね……呼吸も浅い。昨日の疲労もあるが、これは“発熱性の急性症状”だ。病院で検査したほうがいい。」

俊 「……病院、行くのか。」

医者 「念のためだよ。子どもは急に悪くなることがあるからね。」

壮太は不安そうにタツキの手を握る。

「タツキ……大丈夫だよ……」

タツキ 「……そーた…… タツキ……ねむい……」

 

医者 「俊くん、抱き上げてあげて。そのまま担架に乗せよう。」

俊 「わかった。」

俊はタツキをそっと抱き上げる。

タツキは弱い力で俊の服を掴む。

「……しゅん…… タツキ……いきたくない……」

俊は優しく答える。

「大丈夫だ。俺が一緒に行くからな。」

壮太 「タツキ、怖くないよ……」

エミ 「タツキくん……がんばって……」

サキ 「すぐ戻れるからね……」

ハルト 「声が弱い……心配だね……」

カヨ 「昨日あんなに元気だったのに……」

ヤンチャ君 「よし、みんな。落ち着け。タツキは強い子だ。」

 

俊がタツキの手を握り続ける。

壮太は反対側でタオルを持っている。

タツキ 「……しゅん…… タツキ……ねむい……」

俊 「寝てていい。すぐ着くからな。」

車の揺れに合わせて、タツキの呼吸が小さく上下する。

壮太 「タツキ……がんばって……」

医者 「検査に入る。俊くんと壮太くんは待合室で待っていて。」

俊 「わかった。」

壮太 「タツキ……すぐ戻ってきてね……」

タツキは担架の上で、 薄く目を開けて俊を見る。

「……しゅん…… タツキ……くるしい……」

俊は胸が締めつけられるような顔で答える。

「大丈夫だ。絶対に良くなる。俺がここにいる。」

そしてタツキは検査室へ運ばれていく。

 

病院の白い部屋。

昨日の青と白のクリームの色はもうない。

代わりに、静けさと機械の音だけがある。

タツキはベッドに横たわり、点滴の管が細い腕に繋がれている。

呼吸は浅く、目は半分しか開かない。

俊(18)はずっと手を握っている。

壮太(10)は反対側で泣きそうな顔をしている。

他のみんなも病院にやってきた。

エミ(14) 「タツキくん……富士山、また作ろうね……」

サキ(17) 「昨日あんなに笑ってたのに……」

ハルト(16) 「声が……弱い……」

カヨ(14) 「タツキくん……タツキくんが作った富士山の写真だよ……」

ヤンチャ君(24) 「みんな、落ち着け。タツキは……聞こえてる。」

医者は静かに言う。

「……ごめんなさい。病気の進行が早すぎます。もう……できることはありません。」

部屋の空気が止まる。

俊はタツキの手を強く握る。

「おい……タツキ…… 昨日、誕生日だっただろ…… また来年もやるんだよ…… 聞いてるか……?」

タツキはゆっくり目を開ける。

「……しゅん…… タツキ……ねむい……」

壮太は涙をこらえながら言う。

「タツキ……起きてよ…… 一緒にごはん食べようよ……」

タツキ 「……壮太…… タツキ……いきたい…… でも……ねむい……」

エミは口を押さえて泣く。

サキは肩を震わせる。

ハルトは静かに涙を流す。

カヨは手を握りしめる。

ヤンチャ君は目を閉じて深く息を吸う。

 

タツキは俊の手を弱く握る。

「……しゅん…… タツキ……みんなといっしょ……たのしい……みんな……だいすき……」

俊 「……ああ。俺もだよ…… タツキ……」

タツキは壮太の方を向く。

「……そーた…… いっしょ……ありがと……」

壮太 「うん……ずっと一緒だよ……」

タツキは小さく息を吸う。

「……みんな…… ありがと……」

そして—— そのまま、息を吐いたあと、もう吸わなかった。

機械の音が静かに止まる。

医者 「……ご臨終です。」

 

俊はタツキの手を離せない。

壮太は声を出して泣く。

エミは肩を震わせる。

サキは涙を拭いながらタツキの髪を撫でる。

ハルトは静かに手を合わせる。

カヨはタツキの足に触れて泣く。

ヤンチャ君は目を閉じて深く頭を下げる。

昨日の笑い声が、遠い記憶みたいに感じられる。

でも、みんなの胸の中には、昨日の富士山ケーキの青と白が、まだ静かに残っている。

2026/08/18

タツキの物語(俊の記憶) 第6回

6章 タツキの誕生日(富士山ケーキ〜大暴走〜寝落ち)

その日は朝から施設が少しだけそわそわしていた。

タツキはまだ知らない。

でも、みんなは知っている。

 

今日はタツキの12歳の誕生日。

精神年齢は5歳のままだけど、身体は確実に成長していて、

共同体の中心としての存在感はますます大きくなっている。

 

俊(18)は、発明チームのリーダーとして、朝から作業場に立っていた。

今日はタツキの誕生日。

仕事よりも、タツキを喜ばせる仕掛けづくりが優先だ。

 

ハルト(16)がそっとスイッチの位置を確かめながら言う。

「俊くん、このスイッチ押すと風船が一気に膨らむよ。」

「よし。タツキが絶対喜ぶやつだな。」

俊は図面を確認しながらうなずく。

カヨ(14)が図面を差し出す。「飾り付けの配置、これでいい?」

「完璧。さすがカヨ。」 俊は笑って答えた。

今日は完全に“タツキ優先”の日だ。

ハルトは音と触覚で飾り付けの位置を確認しながら、

「タツキくん、どんな反応するかな……楽しみだね」と小さくつぶやく。

カヨは安全性のチェックを続ける。

「タツキくんが走っても壊れないようにしてあるよ。」

その一方で、サキ(17)とエミ(14)は厨房でケーキを仕上げていた。

サキはクリームを整えながら言う。

「甘さ控えめで、でも子どもが好きな味にするね。」

エミは横で材料を並べながら笑う。

「タツキくん、絶対喜ぶよ!」

壮太(10)は、タツキを外へ連れ出して準備を見せないようにしていた。

「タツキ、今日は散歩しよう。戻ってきたら楽しいことあるよ。」

「壮太ーーー!! タツキ、あそぶーーー!!」

タツキはいつものように全力で返事をする。

そして、全体の段取りを管理するのはヤンチャ君(24)だ。

「よし、みんな。タツキが戻るまであと30分だ。最終チェックいくぞ。」

作業場には、誕生日を迎えるタツキのために、それぞれの役割を持った仲間たちが静かに、でも確かな熱をもって動いていた。

 

壮太に連れられて戻ってきたタツキは、玄関で立ち止まる。

「……なにこれーーー!!」

風船が一斉に膨らむ仕掛けが作動する。紙吹雪がふわっと舞う。

俊 「タツキ、誕生日おめでとう。」

タツキ 「しゅんーーー!! タツキ、たんじょうびーーー!!」

壮太 「12歳だよ。おめでとう、タツキ。」

タツキは壮太に抱きつき、そのまま俊にも飛びつく。

ヤンチャ君 「ほらほら、転ぶなよ。今日は主役なんだからな。」

 

部屋の照明が少し落ちて、みんなが静かに息をひそめる。

俊(18)はタツキの肩に手を置き、「タツキ、ちょっと待ってろよ」と小声で言う。

壮太(10)はタツキの手を握って、「戻ってきたら楽しいことあるよ」と笑っている。

タツキ(12・精神5)はそわそわしている。「壮太ーーー!!タツキ、なにするのーーー!!」

そのとき—— 廊下の向こうから、ふわっと甘い香りが漂ってくる。

 

エミ(14)が両手で大きなトレイを支え、サキ(17)が慎重に横を歩く。

その上には—— 青い斜面に白い雪がかかった、見事な“富士山ケーキ”。

エミ 「タツキくん、見て!今日は特別だよ!」

サキ 「ゆっくり歩くからね、崩れないように……」

二人は息を合わせて、まるで宝物を運ぶみたいにケーキをテーブルへ。

ハルト(16)は音で位置を確認しながら、「すごい……本物みたいだね」と微笑む。

カヨ(14)は図面を片手に、「飾り付け、全部計算通りだよ!」と誇らしげ。

ヤンチャ君(24)は腕を組んで、 「よし、完璧だ。タツキ、こっちだぞ」と声をかける。

 

エミとサキが富士山ケーキを運んできた瞬間—— タツキは固まる。

「……ふ、ふじさん…… ケーキーーー!!」

壮太 「タツキ、ロウソク消してからね!」

俊 「ほら、ここに立てるぞ。」

俊が山頂にロウソクを立てると、タツキはもうがまんの限界。

「タツキ、ふーするーーー!!」

勢いよく吹きかけてロウソクが全部消えた瞬間——

タツキ 「タツキ、ふじさんーーー!!」

壮太 「タツキ、待って!!まだ切ってない!!」

俊 「やめろって言ってるだろ!!」

タツキは富士山の“青い斜面”に手を突っ込む。

ぐしゃっ。

エミ 「わーーー!!」

サキ 「タツキくん!!そこは雪じゃないよ!!」

タツキは手についたクリームを見て叫ぶ。

「しゅんーーー!! タツキ、あおいーーー!!」

俊 「いや、それクリームだから!!」

 

タツキ 「タツキ、やるーーー!!」

ぽすっ(俊の顔に青いクリーム)

俊 「おい!!」

ハルト 「俊くん、顔……青いよ……」

カヨ 「富士山の色になってる……」

タツキはさらに手を突っ込んで、白い“雪クリーム”をつかむ。

ぽすっ(壮太の頭に雪)

壮太 「ひゃっ……冷たい!!」

タツキ 「壮太ーーー!!ゆきーーー!!」

 

エミ 「ちょっと!タツキくん!!」

ぽすっ(エミの頬に青クリーム)

エミ 「わーーー!!」

サキ 「エミ、顔!!」

ぽすっ(サキの髪に白クリーム)

サキ 「えっ……ちょっと……」

ハルトは音で状況を察しながら苦笑する。

「みんな……クリームの音がすごい……」

カヨ 「タツキくん、もうやめてーーー!!」

ぽすっ(カヨの手に青クリーム)

カヨ 「うわーーー!!」

 

タツキ 「やんちゃーーー!! タツキ、ふじさんーーー!!」

ヤンチャ君 「はいはい、タツキストップ〜」

タツキは勢いのままヤンチャ君に飛び込む。

べちゃっ(青+白クリームがヤンチャ君の服に)

ヤンチャ君 「……俺まで富士山になったじゃないか。」

俊 「ほらな。 こういうところが憎めないんだよ。」

壮太 「みんなクリームまみれだよ……」

タツキ 「たのしいーーー!! タツキ、ふじさんーーー!!」

 

床は青と白のクリーム。みんなの顔は富士山の色。タツキは満面の笑み。

タツキが富士山ケーキに手を突っ込み、青い斜面をぐしゃぐしゃにして、みんなにクリームを投げまくった結果——

部屋は完全に“富士山の雪崩”状態。

俊は顔が青い。

壮太は頭に白い雪。

エミは頬に青い線。

サキは髪に白いクリーム。

ハルトは音で状況を察して苦笑。

カヨは手が青い。

ヤンチャ君は服が富士山。

タツキは満面の笑み。

「たのしいーーー!! タツキ、ふじさんーーー!!」

俊 「おい……俺の顔、富士山なんだけど……」

壮太 「みんなクリームまみれだよ……」

エミ 「でもかわいい……」

サキ 「いや、かわいいけど……これは……」

そのとき、ヤンチャ君がタツキの肩をそっと掴む。

 

ヤンチャ君 「タツキ。 楽しいのはわかるけどな…… 食べ物で遊んじゃいけないぞ。 みんなで作ったケーキなんだから、大事にしないと。」

タツキはクリームまみれの手を見て、きょとんとする。

「やんちゃ…… タツキ、ふじさん……たのしい……」

ヤンチャ君は笑って、でも優しく続ける。

「楽しいのはいいんだよ。でも、食べ物は“遊ぶもの”じゃなくて“食べるもの”だ。わかる?」

タツキ 「……たべる……?」

壮太 「そうだよ。みんなで作ったんだから、ちゃんと食べようね。」

俊 「ほら、タツキ。ケーキは食べるほうが美味しいぞ。」

タツキは少し考えて、クリームまみれの手をぺろっと舐める。

「……おいしいーーー!! タツキ、たべるーーー!!」

ヤンチャ君 「よし。 じゃあ、食べような。」

 

サキ 「じゃあ、切るよ〜……って、手がクリームまみれなんだけど。」

エミ 「もういいよ!今日はそういう日!」

俊 「サキ、慎重に。タツキがまた突撃するぞ。」

タツキ 「やだーーー!!タツキ、ふじさんーーー!!」

壮太 「タツキ、座って。食べるよ。」

サキがケーキを切ると、青い斜面と白い雪が断面になって、本当に富士山の地層みたいに見える。

ハルト 「すごい……音でわかる。柔らかいね。」

カヨ 「断面、図面通りだよ!」

 

みんなクリームまみれの手で、そのままケーキをつまんで食べる。

俊 「……うまっ。顔にクリームついてても味は最高だな。」

壮太 「タツキ、ゆっくり食べようね。」

タツキ 「おいしいーーー!! タツキ、もっとーーー!!」

エミ 「タツキくん、顔にもケーキついてるよ!」

サキ 「もう誰がケーキで誰がクリームかわからないね。」

ハルト 「みんなの声が楽しそうで……いいね。」

カヨ 「こんな誕生日、他にないよ。」

ヤンチャ君 「これがこの施設のいいところだ。好きなことをして、好きな人と食べて、 好きなように生きる。」

俊 「タツキがいると、こうなるんだよな。でも……悪くないな」

タツキ 「しゅんーーー!! タツキ、たんじょうびーーー!!」

俊 「はいはい……おめでとうな。」

 

富士山ケーキの大暴走で、部屋は青と白のクリームだらけ。

俊は顔が青い。

壮太は頭に白い雪。

エミは頬に青い線。

サキは髪に白いクリーム。

ハルトは手に少しついている。

カヨは指先が青い。

ヤンチャ君は服が富士山。

タツキは全身が青と白。

みんな笑っている。

 

タツキ 「たのしいーーー!! タツキ、ふじさんーーー!!」

壮太 「みんなで写真撮ろうよ!」

ヤンチャ君 「よし、記念写真だ。今日はもう、クリームまみれのままでいい。」

 

みんながケーキの周りに集まる。

タツキは真ん中。

俊はタツキの肩を抱く。

壮太はタツキの手を握る。

エミとサキは左右で笑っている。

ハルトは音で位置を確認して微笑む。

カヨは図面を持ったまま。

ヤンチャ君は後ろで腕を組んでいる。

全員、顔がクリームまみれ。

壮太 「はい、いくよー! タツキ、笑って!」

タツキ 「しゅんーーー!! タツキ、たんじょうびーーー!!」

パシャッ。

最高の写真が撮れた。

俊 「……これ、絶対飾ろうな。」

エミ 「今日のタツキくん、ほんと可愛い。」

サキ 「みんなの顔が面白すぎる。」

ヤンチャ君 「よし、次は—— お風呂だ。全員集合。

 

タツキ 「おふろーーー!! タツキ、いくーーー!!」

壮太 「走らないよ!!」

俊 「タツキ、滑るから気をつけろって!」

エミ 「クリームで床がぬるぬるしてるよ!」

サキ 「みんな、タオル持ってね!」

ハルト 「音がすごい……みんな楽しそう。」

カヨ 「お風呂でクリーム落とそうね!」

ヤンチャ君 「ほら、列になれ。タツキは俺が見てるから安心しろ。」

タツキは俊の腕にしがみつきながら跳ねる。

「しゅんーーー!! タツキ、おふろーーー!!」

俊 「はいはい……行くぞ。」

 

湯気がふわっと上がる。

クリームが溶けて流れていく。

みんなの顔が元に戻る。

タツキは湯船でぷかぷか浮かびながら笑う。

「たのしいーーー!! タツキ、ふじさんーーー!!」

俊 「今日はほんとに暴れたな……」

壮太 「でも、楽しかったね。」

ヤンチャ君 「こういう日が一番いいんだよ。」

ハルト 「みんなでね。」

タツキ 「みんなーーー!! だいすきーーー!!」

 

みんなクリームを流して、やっと落ち着こうとしている。

俊 「はぁ……やっと顔の青が落ちた……」

壮太 「タツキ、ゆっくり入ろうね。」

ハルト 「音が反響してる……広いね。」

ヤンチャ君 「よし、みんな。ゆっくり——」

その瞬間。

タツキ 「タツキ、水てっぽうーーー!!」

俊 「おい、どこから出したそれ!!」

タツキはどこかから水鉄砲を持ってきていた。

 

タツキ 「しゅんーーー!! タツキ、やるーーー!!」

びゅっ!!

俊の顔に直撃。

俊 「おい!!また顔かよ!!」

びゅっ!!

壮太の胸に直撃。

壮太 「ひゃっ……冷たい!!」

びゅっ!!

ハルトの手に直撃。

ハルト 「わっ……音でわかる……水鉄砲だ……」

びゅっ!!

ヤンチャ君の胸に直撃。

ヤンチャ君 「……また俺か。」

タツキ 「たのしいーーー!! タツキ、水てっぽうーーー!!」

 

タツキは突然、シャンプーを手にぷにゅっと出す。

俊 「おい……それはやめろ……」

タツキ 「タツキ、やるーーー!!」

ぽすっ(俊の頭にシャンプー)

俊 「またかよ!!」

ぽすっ(壮太の頭に)

壮太 「タツキ、もう泡だらけだよ!!」

ぽすっ(ヤンチャ君の頭に)

ヤンチャ君 「……俺はもう何色でもいいよ。」

タツキ 「しゅんーーー!! タツキ、あわーーー!! タツキ、ふじさんーーー!!」

俊 「お風呂で富士山作るな!!」

 

みんな疲れてる。

みんな濡れてる。

みんな泡まみれ。

でも、誰も怒らない。

壮太 「タツキ、楽しいね。」

ハルト 「みんなの声が明るい……いいね。」

ヤンチャ君 「……まあ、誕生日だからな。」

俊はタツキの頭を軽く撫でる。

俊 「ほんと、憎めないよな…… タツキは。」

タツキ 「しゅんーーー!! タツキ、たんじょうびーーー!!」

 

湯船の中で泡を頭に乗せて、 水鉄砲を撃ちまくっていたタツキ。

俊 「おい、もう俺の顔泡だらけだぞ……」

壮太 「タツキ、もう少し静かにしようね……」

ヤンチャ君 「まあ誕生日だからな……」

そんな中、タツキは突然動きを止める。

ぽちゃん。

水鉄砲を湯船に落とす。

タツキ 「……あきた…… タツキ、ねむい……」

俊 「急にどうしたんだよ……」

壮太 「タツキ、眠くなったの?」

タツキは俊の胸にそのまま倒れ込む。

「しゅん…… タツキ、ねむい……」

俊 「はいはい……暴れすぎたんだよ。」

ヤンチャ君 「誕生日のタツキは、いつも最後に電池切れるんだよな。」

ハルト 「声が急に静かになった……かわいいね。」

 

タツキは俊の胸に顔をうずめて、湯気の中で目を半分閉じている。

「しゅん…… タツキ、ねむい……」

俊 「はいはい……もう出るぞ。」

壮太 「タツキ、立てる?手貸すね。」

タツキは壮太の手を握るけど、足がふらふらしている。

ヤンチャ君 「よし、俊。抱っこしてやれ。今日はもう限界だ。」

俊 「だな。」

俊はタツキをそっと抱き上げる。

タツキは濡れた髪のまま、俊の肩に顔をうずめている。

「しゅん…… タツキ、ねむい……」

俊 「わかったよ。部屋まで運ぶからな。」

 

みんなでお風呂を出て、廊下をゆっくり歩く。

壮太はタオルを持って俊の横を歩く。

「タツキ、もうすぐお部屋だよ。」

ハルト 「足音が静か……眠いんだね。」

ヤンチャ君 「暴走して、笑って、泡まみれになって、最後に電池切れる。これがタツキの誕生日だ。」

俊 「ほんと、憎めないよな……」

タツキ 「……しゅん……ねむい……」

 

俊はタツキを布団にそっと寝かせる。

タツキはまだ俊の服を握っている。

壮太 「タツキ、手離してね。布団かけるよ。」

タツキ 「……やだ……しゅん……」

俊は笑って、タツキの手を優しくほどく。

「ほら。寝るんだよ。今日はいっぱい遊んだからな。」

 

女子も合流している。

壮太がタオルで髪を軽く拭く。

サキが布団を整える。

エミが部屋の灯りを少し落とす。

ハルトが静かにドアの位置を確認する。

ヤンチャ君が全体を見守る。

共同体全員で、タツキの“寝る準備”を整える。

 

タツキ 「……しゅん…… タツキ……ねむい……」

俊 「はいはい……おやすみ。」

タツキはそのまま、 すー……っと寝息を立て始める。

壮太 「寝たね……」

エミ 「かわいすぎる……」

サキ 「今日、ほんとに楽しかったね。」

ハルト 「声が静かになった……」

カヨ 「誕生日っていいね。」

ヤンチャ君 「よし、みんな。タツキは寝た。今日はこれで終わりだ。」

俊はタツキの寝顔を見ながら、小さく笑う。

「……ほんと、憎めないよな。」

 

お風呂から出たあと、みんなはタツキの部屋をそっと閉めて、静かに食堂へ戻る。

そこはまだ、青と白のクリームが床に点々と残っていて、富士山ケーキの名残があちこちに散らばっている。

俊 「……はぁ。すごいことになってるな。」

壮太 「タツキ、ほんとに全力だったね。」

エミ 「でも、あの顔……めちゃくちゃ可愛かった。」

サキ 「うん。あの“ねむい……”って言った瞬間、全部許せるよね。」

ハルト 「声が急に静かになったのが印象的だった……」

ヤンチャ君 「暴走して、笑って、泡まみれになって、最後に電池切れる。あれがタツキの“誕生日の形”なんだよ。」

みんなはモップやタオルを持って、床のクリームを拭きながら話す。

 

エミ 「富士山ケーキ、ほんとに綺麗だったよね…… 最初は。」

サキ 「うん。タツキくんが手を突っ込むまではね。」

俊 「俺の顔に青クリーム投げたの、絶対わざとだろ。」

壮太 「俊くん、顔が本当に富士山だったよ。」

ハルト 「音でわかった……みんなが笑ってた。」

カヨ 「図面通りに作ったのに、タツキくんが全部“自由設計”にしたね。」

ヤンチャ君 「まあ、あれも含めて“成功”だよ。タツキが楽しんだなら、それでいい。」

俊 「ほんと、憎めないよな……あいつ。」

 

床の青と白が少しずつ消えていく。

テーブルの上も綺麗になっていく。

クリームの甘い匂いが薄れていく。

エミ 「なんか……片づけながら思うけど、こういうのって幸せだね。」

サキ 「うん。みんなで散らかして、みんなで片づけるのって、家族みたい。」

壮太 「タツキ、明日の朝起きたら覚えてるかな。」

俊 「覚えてなくてもいいよ。また来年やればいい。」

ハルト 「来年も……みんなでね。」

カヨ 「もちろん。」

ヤンチャ君 「よし、だいぶ綺麗になったな。今日はもう休もう。タツキはぐっすり寝てるし。」

俊は最後にモップを置いて、ふっと笑う。

「……ほんと、いい誕生日だったな。」

2026/08/18

タツキの物語(俊の記憶) 第5回

5章 タツキの“生活の中心化”(マッサージチェア〜砂場〜泥団子〜俊の参加)

壮太に「何がしたい?」と聞かれて、

タツキは少し考えてから、廊下の奥にあるマッサージチェアを指さす。

「タツキ、ぶるぶるのやつ、やる!!」

壮太は笑ってうなずく。

「うん、いいよ。朝の遊びにちょうどいいね。」

タツキはスキップしながらマッサージチェアに向かい、勢いよくよじ登る。

「これ、タツキのすきなやつ!!」

壮太がスイッチを入れると、チェアがゆっくり振動し始める。

その瞬間—— タツキは全身で喜ぶ。

「きたーーー!! ぶるぶるーーー!!」

チェアの振動に合わせて、タツキの体が小刻みに揺れて、その揺れが楽しくて仕方ない。

壮太は横で笑いながら見守る。

「タツキ、楽しそうだね……」

タツキは振動に合わせて声を震わせながら叫ぶ。

「壮太ーーー!! タツキ、ぶるぶるのなかーーー!!」

その声が廊下に響いて、作業していたみんながふっと笑う。

サキ 「かわいいね……」

カヨ 「タツキくん、ほんとに振動好きだなぁ……」

エミ 「なんか……平和だね……」

タツキはチェアの上で揺れながら、満面の笑みで叫ぶ。

「タツキ、ぶるぶるの王さまーーー!!」

壮太は笑って、 タツキの頭をそっと撫でる。

「うん、王さまだね。」

 

タツキはマッサージチェアの上で、壮太にスイッチを押してもらいながら、いろんなモードを試していく。

弱い振動

チェアが軽く震える。

タツキ 「ぶる……ぶる…… タツキのこえ、ゆれるーーー!!」

声が小刻みに震えて、タツキはそれだけで大笑いする。

壮太 「かわいい声になってるよ。」

 

背中だけの振動

背中の部分が強めに揺れる。

タツキ 「うしろが、ぶるぶるーーー!! こえが……こえが…… ぶるるるるるるる!!」

声が完全に機械みたいに震えて、タツキはチェアの上で転げそうになりながら笑う。

俊 「おい、なんだその声!!」

 

足だけの振動

足元がブルブルし始める。

タツキ 「あしが、ぶるぶるーーー!! こえが……あしのこえになってるーーー!!」

壮太 「足の声ってなに……?」

 

強振動モード

チェア全体が大きく揺れる。

タツキ 「うわあああああああ!! タツキ、ぶるぶるのなかーーー!! こえが…… ぶるぶるぶるぶるぶるぶるーーー!!」

声が完全に震えすぎて、もはや何を言ってるかわからない。

女子たちは遠くからくすくす笑っている。

サキ 「タツキくん、楽しそうだね……」

カヨ 「朝から振動でテンションMAXなのすごい……」

 

タツキはしばらくの間、いろんな振動モードを試しては「ぶるぶるーーー!!」 「こえがゆれるーーー!!」と大笑いしていた。

壮太も横で笑いながら見守っていたけど、ある瞬間、タツキの動きがぴたりと止まる。

チェアはまだ振動しているのに、タツキは急に真顔になって、壮太の方を向く。

「……タツキ、もういい。」

壮太は少し驚きながらも笑う。

「飽きちゃった?」

タツキはこくんとうなずく。

「ぶるぶる、おわり。タツキ、つぎのあそびする。」

チェアの振動が止まると、タツキはすっと立ち上がって、さっきまでのテンションが嘘みたいに落ち着いている。

その切り替えの速さが、壮太にはもう慣れっこで、優しく声をかける。

「じゃあ、次は何する?」

 

タツキはマッサージチェアの振動に飽きて、壮太の袖をつかんで言う。

「壮太、つぎのあそびする。」

壮太はタツキの目線に合わせてしゃがみ、少し考えてから、 ゆっくりと提案する。

「タツキ…… 外で、砂で富士山を作るのはどう?」

タツキはその言葉を聞いた瞬間、目をまん丸にして固まる。

「すな……? ふじさん……?」

壮太は優しく笑ってうなずく。

「うん。昨日はごはんで作ったでしょ? 今日は砂で作ってみよう。外の砂場なら、もっと大きいのが作れるよ。」

タツキは一気に顔を輝かせる。

「おおきいの!? すなで!? ふじさんつくるーーー!!」

その声がリビングに響いて、作業していた女子たちがふっと笑う。

サキ 「タツキくん、砂の富士山かぁ……かわいいね。」

カヨ 「昨日の巨大富士山より大きくなるかもね。」

エミ 「外で遊ぶの、いいね……」

タツキはもう玄関の方へ走り出している。

「壮太ーーー!! すなのふじさんーーー!!」

壮太は笑いながら後を追う。

「待って、靴履かないと……!」

 

砂場に着くと、タツキは勢いよく砂をかき集めて、大きな富士山を作ろうとする。

でも—— 砂は崩れる。

何度やっても、山の形にならない。

タツキはスコップを握ったまま、眉をぎゅっと寄せて叫ぶ。

「なんでーーー!! すな、くずれるーーー!!」

スコップを投げそうな勢いで、砂をばしばし叩く。

「ふじさん、できないーーー!! タツキ、できないーーー!!」

その声は、昨日の富士山の成功体験が強かった分、余計に悔しさがにじんでいる。

壮太はすぐに近づいて、しゃがんでタツキの目線に合わせる。

「タツキ、砂はね…… 水がないと崩れちゃうんだよ。」

タツキは涙目で砂を見つめる。

「みず……?」

壮太は水道の方を指さす。

「うん。水を混ぜると、砂がくっついて、富士山が作りやすくなるんだよ。」

タツキは一瞬で顔を輝かせる。

「みずーーー!! みず、もってくる!!」

走り出そうとするタツキを、壮太がそっと止める。

「タツキ、危ないから一緒に行こう。」

タツキは壮太の手をぎゅっと握る。

「壮太、いっしょ!!」

 

水をバケツに入れて戻ってくると、壮太は砂に少しずつ水を混ぜていく。

「こうやってね…… 砂をぎゅっと押すと、形ができるよ。」

タツキは真剣な顔で見つめている。

壮太が手で形を整えると、砂がしっかり固まって、小さな山ができる。

タツキは目をまん丸にして叫ぶ。

「できたーーー!! すな、くっついたーーー!!」

壮太は笑ってうなずく。

「タツキもやってみよう。」

タツキは両手で砂をぎゅっと押して、少しずつ山を作り始める。

「タツキの…… すなの…… ふじさんーーー!!」

さっきまでのいらいらはどこかへ消えて、タツキはまた笑顔に戻る。

砂場でタツキが富士山を作っていると、リビングで作業していた女子たちが 「なんか外で声してるね」と言いながら見に来る。

サキ 「タツキくん、砂で富士山作ってるの?」

カヨ 「かわいい……でもちょっと怒ってる?」

エミ 「壮太くん、水持ってる……あ、調整してるんだね。」

壮太が水を混ぜて形を整えると、タツキは一瞬で機嫌を直して、また笑顔で砂をぎゅっと押し始める。

みんながその様子を見て、ふふっと笑う。

 

しばらくすると、タツキは突然手を止めて、砂の富士山をじーっと見つめる。

そして、スコップをぽいっと置いて言う。

「タツキ、もういい。ふじさん、おわり。」

壮太は慣れたように笑う。

「飽きちゃったんだね。」

タツキはこくんとうなずく。

「つぎのあそびする。」

その瞬間、タツキは水で湿った砂を手で丸め始める。

ぎゅっ、ぎゅっ。

泥団子ができる。

タツキ 「これ、まるいーーー!!」

ヤンチャ君はいないけど、 女子たちが近くで見ている。

サキ 「泥団子作り始めたね……」

カヨ 「タツキくん、絶対これ投げるよね……」

エミ 「壮太くん、気をつけて……」

 

タツキは泥団子をひとつ完成させると、壮太の方を向いてニヤッと笑う。

「壮太ーーー!! これ、ぽいする!!」

壮太 「えっ、ちょっと待って……!」

ぽすっ。

泥団子が壮太の足に当たる。

タツキは大爆笑。

「あたったーーー!!」

女子たちも笑い出す。

サキ 「壮太くん、がんばって……」

カヨ 「タツキくん、楽しそう……」

エミ 「これ、絶対みんな巻き込まれるやつ……」

壮太は苦笑しながら泥団子をひとつ作る。

「じゃあ……タツキ、いくよ。」

ぽすっ。

タツキの足に当たる。

タツキは転げまわって笑う。

「壮太ーーー!! あたったーーー!!」

その声につられて、女子たちも泥団子を作り始める。

サキ 「ちょっとだけね……」

カヨ 「軽く投げるよ……?」

エミ 「タツキくん、いくよー……!」

ぽすっ、ぽすっ、ぽすっ。

砂場が一気に笑い声で満たされる。

 

砂場でタツキと壮太、女子たちが 泥団子をぽすぽす投げ合っている。

笑い声が響いて、砂場はもう小さな戦場みたいになっている。

そのとき—— 俊がゆっくり歩いてくる。

「……なにやってんの?」

俊はいつもの、ちょっと気だるそうな声で言う。

サキ 「俊くん、見に来たの?」

俊 「いや……声が聞こえたから。」

俊は泥だらけのタツキを見て、少しだけ目を丸くする。

「タツキ……顔、すごいことになってるよ。」

タツキは俊を見るなり、泥団子を握って叫ぶ。

「しゅんーーー!! これ、ぽいする!!」

俊 「えっ、ちょっと待っ——」

ぽすっ。

俊の胸に泥団子が当たる。

俊は完全に固まる。

女子たちはくすくす笑う。

カヨ 「俊くん、やられたね……」

俊は胸についた泥を見て、ぽつりと言う。

「……これ、当たるとこうなるんだ。」

壮太 「俊、怒ってない?」

俊は少し考えて、泥団子をひとつ拾う。

「……別に。こういうの、やったことないし。」

タツキは目を輝かせる。

「しゅん、やる!? ぽいする!?!?」

俊は泥団子を手のひらで転がしながら、小さく笑う。

「……まあ、ちょっとだけ。」

ぽすっ。

俊が投げた泥団子が、タツキの足に当たる。

タツキは転げまわって笑う。

「しゅんーーー!! あたったーーー!!」

俊はその反応を見て、ほんの少しだけ肩の力が抜ける。

「……なんか、悪くないね。」

女子たちも笑う。

サキ 「俊くん、楽しそうじゃん。」

俊 「いや……別に……」

でも、俊の口元は確かに笑っている。

壮太はその様子を見て、静かに嬉しそうにする。

 

泥団子戦争がしばらく続いて、砂場はもう小さな戦場みたいになっていた。

俊は泥団子を投げながら、珍しく笑っている。

壮太はタツキに軽く当てて、タツキは転げまわって笑う。

女子たちも軽く投げて、砂場は笑い声でいっぱい。

でも—— そのうちタツキが突然動きを止める。

泥団子を握ったまま、ぽつりと言う。

「タツキ、もういい。」

壮太はすぐに気づく。

「飽きちゃったんだね。」

タツキはこくんとうなずく。

「つぎのあそびする。」

その瞬間、サキがみんなの服を見て苦笑する。

「みんな……泥だらけだよ。」

カヨ 「これは……さすがに洗わないとね。」

エミ 「お風呂行こうか……?」

俊は自分の服についた泥を見て小さくため息をつく。

「……まあ、これはもう入るしかないね。」

壮太はタツキの手を取って言う。

「タツキ、お風呂行こう。泥を落とさないとね。」

タツキは嬉しそうに叫ぶ。

「おふろーーー!! 壮太といくーーー!!」

みんなが笑って、泥だらけのままぞろぞろとお風呂へ向かう。

 

※この施設の子どもたちは、特許や印税などそれぞれ何らかの収入源を持っている。

俊もハルトも、他の子どもたちも、生活の基盤がある程度保証されているため、

将来を考えることなく“好きなことをして過ごす”ことができる。

それが、この施設のゆるやかな自由さを支えている。

なお、子どもにしては高額な収入になることも多いため、

信頼できる大人である弁護士のヤンチャ君が財務管理を手伝っている。

 

みんなが泥だらけのまま、ぞろぞろと男子風呂へ向かう。

女子たちは廊下で止まる。

サキ 「じゃあ、タオルは脱衣所の棚に置いてあるから使ってね。」

カヨ 「私たちは洗濯機まわしておくよ。」

エミ 「タツキくん、壮太くんの言うことちゃんと聞くんだよ〜」

壮太 「女子はここまで! 男子は裸だから絶対入っちゃダメだよ!」

女子たち 「わかってるってば〜!」

俊 「……なんで毎回、女子はここで見送るんだろうな。」

壮太 「タツキが暴走するからだよ……」

タツキ 「おふろーーー!! タツキ、みずーーー!!」

壮太 「走らないって言ったよね……!」

 

男子風呂に入ると、壮太と俊は泥を落とすために体を洗い始める。

壮太 「タツキ、まず体洗おうね。 走らないよ。」

タツキ 「やだーーー!! タツキ、おふろーーー!!」

俊 「また始まった……」

壮太がタツキの背中を洗おうとしたその瞬間——

タツキは どこからか水鉄砲を取り出す。

壮太 「えっ!? タツキ、それどこから持ってきたの!?」

俊 「なんで風呂に水鉄砲あるんだよ……」

タツキは満面の笑みで構える。

「壮太ーーー!! これ、ぴゅってする!!」

びゅっ!!

壮太の胸に水が直撃する。

壮太 「うわっ……タツキ……!」

タツキは大爆笑。

「壮太ーーー!! あたったーーー!!」

俊は避けようとするが、 タツキは俊もロックオンする。

「しゅんーーー!! これ、ぴゅっする!!」

俊 「やめろって言ってるだろ——」

びゅっ!!

俊の顔に水が直撃する。

俊 「……やられた。」

壮太 「タツキ、やめようね。俊にも当てちゃダメだよ。」

タツキ 「やだーーー!! タツキ、みずーーー!!」

びゅっ!びゅっ!びゅっ!

湯気の中で水鉄砲の音が響く。

俊 「壮太、なんとかして……!」

壮太 「タツキ、ストップ!! 水鉄砲は一回だけ!!」

タツキ 「やだーーー!! タツキ、もっとするーーー!!」

俊 「……なんで俺まで巻き込まれるんだよ……」

しばらく暴れたあと、タツキは湯船にぷかーっと浮かんで言う。

「タツキ……ねむい……」

壮太はすぐに気づく。

「眠くなっちゃったんだね。じゃあ、もう出ようか。」

俊は髪を拭きながらため息をつく。

「やっと静かになった……」

タツキは湯船から壮太に抱きつくようにして出てくる。

「壮太……だっこ……」

壮太 「はいはい。すべるから気をつけてね。」

俊 「タツキ、裸で抱きつくなって……」

タツキ 「しゅんもーーー!!」

俊 「やめろって言ってるだろ……」

壮太は笑いながらタオルを取って、タツキの体を包む。

「ほら、タツキ。まずタオルで拭こうね。」

タツキはタオルに包まれたまま、壮太の胸に顔をうずめている。

「タツキ……ねむい……」

俊は自分の体を拭きながら言う。

「壮太、タツキもう限界だぞ。」

壮太 「うん、今日はいっぱい遊んだからね。」

タツキはもう半分寝ている。

壮太はタオルでタツキを包んだまま、抱きかかえて男子風呂を出る。

タツキは壮太の肩に顔をうずめて、もうほとんど目を閉じている。

「壮太……ねむい……」

壮太 「うん、もう寝ようね。お部屋に行くよ。」

俊は髪を拭きながらついてくる。

「タツキ、完全に落ちたな……」

壮太 「毎回こうだよ……暴走したあとに急に眠くなるんだ。」

俊 「まあ、子どもってそういうもんか。」

廊下に出ると、女子たちはちゃんと距離を置いて待っている。

サキ 「タツキくん、寝ちゃったんだね。」

カヨ 「壮太くん、部屋まで運ぶの大変そう……」

エミ 「タツキくん、かわいい……」

壮太は笑ってうなずく。

「大丈夫。慣れてるから。」

壮太はタツキを布団に寝かせる。

タツキはタオルに包まれたまま、壮太の手をぎゅっと握る。

「壮太……いっしょ……」

壮太はその手を優しくほどいて、布団をかけてあげる。

「タツキ、ゆっくり寝ようね。起きたらまた遊ぼう。」

タツキ 「……うん……」

そのまま、すー……っと寝息が静かに部屋に広がる。

俊はドアのところで腕を組んで見ている。

「……寝たな。」

壮太 「うん。今日は本当に全力だったからね。」

俊 「お前も大変だな……」

壮太 「でも、こうやって寝顔を見ると全部どうでもよくなるんだよ。」

俊は少し笑う。

「……まあ、わかる気がする。」

 

こんな感じで、毎日がタツキ中心になったけど、笑いが絶えなくなった。

気づいたら僕は施設の寮生みんなと仲良くなっていた。

 

その日は、朝からタツキがそわそわしていた。

「やんちゃーーー!! くるーーー!!」

壮太 「今日は来る日だもんね。でも走らないよ。」

俊 「絶対走るだろ……」

そして、ヤンチャ君が施設に入ってきた瞬間——

タツキのスイッチが爆発する。

「やんちゃーーー!!!!!」

裸足のまま廊下を全力疾走。

壮太 「タツキ!! 走らないって言ったよね!!」

俊 「もう無理だろ……」

ヤンチャ君は笑いながら両手を広げる。

「はいはい、タツキストップ〜!」

タツキは勢いのままヤンチャ君に飛び込む。

「やんちゃーーー!! タツキ、きたーーー!!」

ヤンチャ君 「おう、来たな。今日は元気だな〜」

壮太 「“今日は”じゃなくて“いつも”だよ……」

俊 「いや、今日はいつもの3倍くらいだぞ……」

 

「やんちゃーーー!! みずーーー!!」

びゅっ!!(水鉄砲)

ヤンチャ君 「おいおい、俺にも撃つのかよ!」

俊 「やめろって言ってるだろ!!」

壮太 「タツキ、今日は本当にすごい……」

俊 「なんであんなにテンション上がるんだ……」

壮太 「ヤンチャ君が来る日はいつもこうだよ……」

 

俊「タツキはヤンチャ君が大好きなんだな。まだ幼いのに親から育児放棄されてここにきたみたいだから、大人に甘えたいのかもな」

 

タツキははしゃぎすぎて、しばらくしたら眠いといいだした。

壮太はタツキを抱っこしながら、俊の言葉に静かにうなずく。

壮太 「そうだね…… タツキ、甘えたいんだよね。」

タツキは壮太の胸に顔をうずめる。

「壮太……いっしょ……」

俊は少し笑う。

「ほらな。こういうところが“まだ幼い”って感じなんだよ。」

ヤンチャ君はタオルを肩にかけながら言う。

「甘えたいなら甘えさせてやればいいんだよ。ここはそういう場所だろ?」

壮太 「うん。タツキが安心できるなら、それでいい。」

俊 「……まあ、俺も嫌いじゃないけどな。」

 

俊が言ったあと、壮太はタツキを抱っこしながら静かに答える。

壮太 「うん……タツキ、甘えたいんだよね。でも、甘えていいんだよ。ここはそういう場所だから。」

俊は少し驚く。

「……お前、10歳だよな?」

壮太 「うん。でも、タツキが安心してくれたらそれでいいんだ。」

俊は笑う。

「……なんか、お前のほうが大人みたいだな。」

壮太 「そんなことないよ。僕もタツキと遊ぶの好きだし。」

タツキは壮太の胸で寝息を立てている。

俊 「……まあ、こういうのも悪くないな。」

この空気がこの施設の良さでもある。

 

俊 「でも、裸で出るのは困るよな。精神年齢は5歳でも身体は大人に近づいてる。」

俊はタツキの身体の成長を“現実的に”見ている。

そしてこの言葉は、タツキの発達のズレを理解している証拠。

俊はただ困っているだけじゃなくて、タツキの背景と発達をちゃんと見ている

ここが俊の優しさ。

壮太 「うん……困るけど、タツキは悪気ないんだよ。まだ“裸はダメ”っていう感覚が育ってないんだ。」

俊 「まあ、そうだよな…… 身体はもう子どもじゃないのに、心はまだ小さいままだから。」

ヤンチャ君は笑いながらタツキの頭を撫でる。

「だからこそ、俺たちが守ってやるんだよ。タツキは安心していい。」

タツキは壮太の胸に顔をうずめている。

「壮太……ねむい……」

俊 「……こういうところが、まだ5歳なんだよな。」

壮太 「うん。でも、それでいいんだよ。」

 

俊は机に向かって、ハルトとカヨと一緒に新しい回路を組んでいる。

ハルト 「俊くん、ここの抵抗値もう少し下げたほうがいいかも。」

俊 「うん、そうだな。カヨ、図面のここ——」

そのとき、廊下から声がする。

「しゅんーーー!!」

俊 「……来たな。」

タツキが裸で走ってくる。

壮太 「タツキ、走らないって言ったよね!!」

俊はため息をつきながらも、工具をそっと置く。

「ハルト、ちょっと待ってて。タツキ優先。」

ハルト 「うん、わかってる。」

カヨ 「俊くん、行ってあげて。」

タツキは勢いよく俊に抱きつく。

「しゅんーーー!! タツキ、きたーーー!!」

俊 「はいはい……来たな。ほら、タオル巻けって……」

ヤンチャ君がタオルを持って近づく。

「俊、仕事中でもタツキ優先だな。」

俊 「当たり前だろ。こいつは俺の大切な家族なんだから。」

タツキ 「しゅんーーー!! だいすきーーー!!」

俊 「……はいはい。」

そして俊は、タツキが落ち着くまでそばにいて、そのあと静かに机に戻る。

 

タツキが落ち着いて寝息を立て始めると、俊はそっと席に戻る。

ハルト 「俊くん、戻った?」

俊 「うん。 タツキが寝たから、今なら集中できる。」

カヨ 「俊くんって、すごいよね。発明もできるし、タツキのことも見てるし。」

俊 「……まあ、どっちも大事だからな。」

ヤンチャ君 「そういうところが、タツキが懐く理由だよ。」

俊は少し照れたように笑う。

「……そうかもな。」

 

翌日の午後、俊はハルトとカヨと一緒に発明の作業をしていた。

そこへタツキが勢いよく突撃してきた。

タツキが俊の机に突撃して、工具を散らかしてしまう。

壮太 「タツキ、そこはダメだよ!俊くん仕事中なんだから!」

タツキ 「しゅんーーー!! タツキ、あそぶーーー!!」

俊は散らかった工具を拾いながらため息をつく。

「……おい、タツキ。そこはあぶないから触るなって言ってるだろ。」

タツキは悪びれず笑う。

「しゅんーーー!! だいすきーーー!!」

俊は一瞬だけ困った顔をして、そのあとふっと笑う。

「……タツキってなんか憎めないんだよな~」

壮太 「俊くん、優しいね。」

ヤンチャ君 「お前、発明で何百万も稼いでるのに、タツキが来たら全部止めるよな。」

俊 「そりゃそうだろ。こいつはまだ5歳なんだよ。放っとけるわけないだろ。」

タツキは俊の腕にしがみついている。

「しゅんーーー!! タツキ、ねむいーーー!!」

俊 「ほらな。 こういうところが憎めないんだよ。」

2026/08/18

タツキの物語(俊の記憶) 第4回

4章 タツキが共同体に溶け込む日(ペンキ〜男子風呂〜富士山)

そんな頃、サキがヤンチャ君に「ペイント手伝って!」と声をかけたことで、突然騒動が起きた。

サキは誰彼かまわず、近くにいる人に手伝わせる。

サキが船の横でペンキを広げていて、その場には僕とハルト、カイ、そして壮太もいた。

壮太は10歳でタツキよりも年下だったが、タツキは壮太を兄のように慕っていた。

壮太はペンキの匂いが苦手らしく、少し離れたところで様子を見ていた。

 

サキは船の装飾を進めたくて、ヤンチャ君の腕を引っ張って作業場に連れていこうとした。

その瞬間、タツキが慌ててヤンチャ君の服の裾を掴んで、必死に引き止めた。

「やだ!やだ!ヤンチャ、いかない!」

タツキは半泣きで、ヤンチャ君の背中にしがみついて離れない。

サキも「えっ、なんで!?」と固まってしまう。

 

壮太は慌てて近づいて、「タツキ、大丈夫だよ……」と小さな声で言った。

その声がやさしくて、タツキは少しだけ泣き止んだ。

「タツキ、ヤンチャ君取られちゃうって思ったの?」と壮太が聞くと、

タツキは小さくうなずいた。

その仕草があまりにも可愛くて、僕たちもつい笑ってしまった。

 

その空気に安心したのか、タツキは少しずつ顔を出して、サキの持っていたペイント用の色をじっと見つめた。

「……これ、やる?」

サキがそっと差し出すと、タツキはおそるおそる手を伸ばして、指先に色をつけて、船の側面にちょんと触れた。

その瞬間、タツキの顔がぱっと明るくなった。

「きれい!」

その声を聞いて、僕たちの胸が一気に温かくなった。

タツキが僕たちの前に顔を出して、自分から“やりたい”を見せた瞬間だった。

そこからはもう止まらなかった。

タツキはペンキを手のひらにつけて、サキの頬にぺたん。

サキが「ちょっと!」と叫んだ瞬間、壮太の背中にもぺたん。

カイの肩にもぺたん。

僕の額にもぺたん。

気づけば、みんながペンキまみれになっていた。

サキは笑いながらタツキの手を取って、「もう!やるならちゃんとやろ!」と言って、顔をこすったもんだから、自分のほっぺに青い線を描いた。

みんなの反応を見てタツキは大喜びしている。

みんなの顔に色をつけて回った。

ハルトは音の反応よりも早く逃げようとしたけど、タツキの手のひらスタンプが見事に額に命中した。

ユウキの義足の調整で来ていた装具メーカーの人まで巻き込んで、その人の白い作業着に赤い丸がついた。

最後には、ヤンチャ君のスーツの背中に黄色い手形がついていて、本人は「おいおい……」と言いながら笑っていた。

その日、僕たちは作業どころじゃなくなって、みんなでペンキまみれになって笑い転げた。

タツキにとって、“怖さより楽しさが勝った日”だった。

 

みんながペンキまみれになって笑い転げていたら、サキが「男子は男子風呂行って!私はカヨと女風呂ね!」と叫んだ。

僕たちは顔を見合わせて、男子風呂へ向かった。

タツキは壮太の手をぎゅっと握ったまま離れない。壮太は「大丈夫だよ」と優しく声をかけながら歩いていた。

お風呂場に着くと、湯気がふわっと上がって、ペンキまみれの僕たちが一斉に「うわ……」と声を漏らした。

壮太はタツキの服を脱ぐのを手伝いながら、「ペンキ、いっぱいついちゃったね……」と小さく笑った。

タツキは不安そうに壮太の腕を掴んでいたけれど、湯船の温かい空気に触れて少しずつ表情がゆるんでいった。

「そーた……いっしょ……」

「うん、一緒に入ろうね。」

タツキは壮太の腕につかまりながら湯船に入った。

湯に触れた瞬間、タツキの顔がぱっと明るくなった。

「きもちい……」

壮太はほっとしたように笑った。

その横で、カイがペンキを落とそうとして必死にこすっていた。

「これ……落ちない……!」

僕はカイの背中を見て笑いながら言った。

「カイ、そんなにこすったら皮むけるよ。」

ユウキは「ペンキってこんなにしつこいの……?」と苦笑していた。

そのとき、タツキが突然湯船の中で立ち上がって、壮太の肩にぺたんと手を置いた。

「そーた、あったかい!」

壮太はびっくりして「わっ」と声を上げたけど、すぐに笑ってタツキの頭をなでた。

その瞬間、タツキが嬉しくなったのか、湯船の中でバシャッと水を跳ね上げた。

「ちょっ……タツキ!!」

僕とカイとユウキに湯がかかって、みんなで「うわあああ!」と叫んだ。

タツキは大喜びで、湯船の中でバシャバシャしながら笑っていた。

壮太はタツキを止めようとして、逆にタツキに抱きつかれて湯の中に沈みかけていた。

「そーた、しずむ!」

「しずまないよ!タツキ、ちょっと待って!」

僕たちは笑いながら壮太を引っ張り上げて、男子風呂はもう完全に騒動になっていた。

でもその騒ぎの中心で、タツキはずっと笑っていた。

怖がりだったタツキが、初めて「安心して騒げる場所」を見つけた瞬間だった。

 

男子風呂は最後まで騒動だった。

タツキは湯船でバシャバシャし続けて、壮太は何度も沈みかけて、

カイは「ぬ、ぬ、ぬるぬる……する……」と半泣きで、ユウキは苦笑していた。

僕たちは湯気の中で笑いすぎて、風呂上がりにはもうヘトヘトだった。

タオルで体を拭きながら、壮太がタツキの髪を優しく乾かしてあげていた。

「タツキ、もう暴れちゃだめだよ……」

「そーた、たのしかった!」

壮太は照れたように笑って、「……うん、楽しかったね」と言った。

そのまま僕たちは食堂へ向かった。

廊下にはまだペンキの足跡が残っていて、それを見てカイが「これ絶対怒られる……」とつぶやいた。

 

この施設では「危険なこと」と「他人に迷惑を掛けること」以外は好きにしてよいことになっているので怒られることはないんだけど・・・。

 

食堂に入ると、 タツキはまっすぐ白米のところへ走っていった。

「ふじさん、つくる!」

壮太が慌てて追いかける。

タツキはごはんを山のように盛って、てっぺんにふりかけをかけて、

横に唐揚げを置いて“溶岩”にして、味噌汁を“湖”にして、サラダを“森”にして——

今日も見事な富士山が完成した。

「みて!壮太!ふじさん!」

タツキは風呂での騒ぎの延長みたいに、満面の笑顔で富士山を掲げた。

壮太はタツキの隣に座って、「すごいね……今日のは、いつもより大きいよ」と言った。

タツキは得意げに胸を張った。

「おふろ、たのしかったから! ふじさん、もっとおおきくした!」

僕たちは笑いながら席についた。

風呂の騒動も、ペンキまみれも、全部が今日の“祭り”だ。

そしてその祭りの締めは、タツキの富士山だった。

 

そこへ、ヤンチャ君が食堂に入ってきて、タツキの富士山を見た瞬間、目をまん丸にした。

「おいおい……タツキ、それ本物よりデカいぞ!」

タツキは嬉しそうに胸を張った。

「ほんものより、おおきい!!」

ユウキも笑いながら覗き込んで言った。

「タツキ、これ……噴火したら食堂が全部埋まるよ。」

タツキは大興奮して、富士山のてっぺんを指さしながら叫んだ。

「ふんか? ふんか! ふんか!」

ヤンチャ君はさらにあおる。

「うわー!溶岩が流れてくるぞー!逃げろー!」

ユウキもノリノリで、

「タツキの富士山、今日めちゃくちゃ強いよ!」

タツキはもう大喜びで、 富士山を両手で抱えるようにして笑った。

ヤンチャ君とユウキがあおって、壮太が横で優しく見守って—— 食堂は今日いちばんの熱気に包まれていた。

僕が「タツキ、そろそろ食べようか」と言うと、タツキは富士山をぎゅっと抱え込んだ。

「たべない!これ、たいせつ!」

壮太が困ったように笑いながら、「タツキ、これはごはんだよ……?」と優しく言ったけれど、タツキは首をぶんぶん振った。

そのとき、ヤンチャ君がゆっくり近づいてきて、タツキの目線に合わせてしゃがんだ。

「タツキ、これ、今日のいちばんすごいやつだな。」

タツキはぎゅっと富士山を抱えたまま、ヤンチャ君を見上げた。

「すごいやつ。なくなっちゃだめ。」

ヤンチャ君はゆっくり言った。

「じゃあさ、なくならないようにしよう。タツキの富士山を“残す”んだ。写真なら、富士山は壊れない。ずっと残る。」

タツキは少し安心した顔になった。

「ずっと……ある?」

「あるよ。タツキの“今日の富士山”は、ずっと残る。」

壮太が写真を撮ると、タツキはじっと画面を見つめた。

「ふじさん、ある……」

ヤンチャ君はそこで、少し声のトーンを変えた。

「なあタツキ。この富士山、食べたらどうなると思う?」

タツキは首をかしげた。

ヤンチャ君は笑って言った。

「タツキの中に入って、タツキの力になるんだよ。なくなるんじゃなくて、タツキの中に“移動する”んだ。」

タツキは目を丸くした。

「ふじさん……タツキのなかに、くる?」

「そう。壊れない。なくならない。タツキの中に入って、タツキがもっと強くなる。」

タツキはゆっくり富士山を見て、またヤンチャ君を見た。

「……ふじさん、タツキのなかに、くる?」

「来るよ。写真で“今日の富士山”は残るし、食べたら“タツキの富士山”になる。なくならない。」

タツキの顔がぱっと明るくなった。

「じゃあ……たべる! ふじさん、タツキのなかにする!!」

ヤンチャ君は笑って、タツキの頭をぽんと叩いた。

「よし。タツキの富士山、いただきますだな。」

 

写真を撮って、「富士山はなくならない」 「タツキの中に移動する」 という安心ができたあと、

タツキは富士山を見て、壮太を見て、ヤンチャ君を見て、ぱあっと笑う。

そして、スプーンを持った瞬間、タツキは突然、意味のないメロディを歌い始める。

「ふーじさーん、タツキのーなかー♪ ふーじさーん、つよくなるー♪」

壮太は笑って、「タツキ、歌、上手だね」 と優しく声をかける。

タツキはうれしそうにうなずいて、富士山のてっぺんをひとくち食べる。

「タツキのなかー♪ ふじさーん♪」

ヤンチャ君は大笑いして、「おいおい、タツキのオリジナルソングかよ!」と肩を揺らす。

ユウキも笑いながら、「今日の富士山、歌付きだね。」とあおる。

タツキはもう完全にご機嫌で、歌いながら富士山を少しずつ食べていく。

「ふーじさーん、タツキのーなかー♪ あしたもーつくるー♪」

その声は、男子風呂の騒動の余韻みたいに、食堂の空気をあたたかくしていく。

 

男子たちが騒ぎながら食堂を出ていったあと、食堂には静けさが戻った。

サキはテーブルの上の残り物を見て、ふっと笑った。

「タツキ君、富士山が大好きなんだね。」

カヨがお茶を飲みながら言う。

「今日のタツキくん、すごかったね。あんなに楽しそうなの初めて見た。」

エミは残った白米を見て、小さく声を出す。

「これ、もったいないからおにぎりにしよ。リビングでみんな食べるでしょ。」

サキがボウルを持って白米を集めながら、いたずらっぽく目を細める。

「じゃあ……闇具おにぎりにする?」

カヨが吹き出す。

「またそれやるの? 誰が食べるかわからないやつ。」

エミは嬉しそうに頷く。

「だって楽しいじゃん。男子に絶対ウケるよ。」

三人は静かに、でも楽しそうに具を探し始める。

サキが海苔を広げながら言う。

「ビュッフェ式なんだから、もっと変なの入れよ。」

カヨが笑いながら皿を漁る。

「ミートボールあるよ。これ絶対わからない。」

エミが真顔で餃子を持ってくる。

「餃子おにぎりって、意外と美味しいかも。」

サキが酢豚の角切りを見つけて目を輝かせる。

「これ入れたら絶対驚くよね。」

カヨが唐揚げをちぎりながら言う。

「ヤンチャ君、これ当たったら絶対叫ぶ。」

エミはサラダのコーンを大量に入れようとして止められる。

「それはただのコーンおにぎりでしょ。」

サキがふふっと笑って言う。

「じゃあ、今日のラインナップは—— ミートボール、餃子、唐揚げ、酢豚、チーズ、梅干し、 あと……これ何?」

カヨが謎の揚げ物の欠片を持ってくる。

「わかんない。でも入れよ。」

三人はくすくす笑いながら、ビュッフェの残り物を全部“闇具”に変えていく。

男子の騒ぎの残りを、女子が静かにカオスへと昇華させる。

 

カヨがトレイを持ち、エミがおにぎりを並べ、サキが最後に海苔を整える。

「よし、持っていこ。男子、絶対気づかないから。」

三人は静かに食堂を出て、男子たちがいるリビングへ向かう。

 

リビングでは男子がまだ余韻で騒いでいる。

タツキは「タツキのなかの富士山〜♪」と歌っていて、壮太は優しく笑っていて、

ヤンチャ君はソファで大の字、ユウキは義足を拭きながらニヤニヤしている。

そこへ女子がトレイを持って入ってくる。

サキが言う。

「おにぎり作ったよ。タツキの富士山の残りで。」

男子は一斉に喜ぶ。

「うわ、ありがと!」 「やったー!」 「タツキも食べるー!」

そして—— 誰も知らないまま、 闇具おにぎりロシアンルーレットが始まる。

 

タツキはおにぎりを両手で持って、嬉しそうに歌いながら食べていた。

「タツキのなかの〜ふじさ〜ん♪」

そのとき、口の中に“何か丸いもの”が入った。

タツキはぴたっと歌を止めて、目をまん丸にした。

もぐもぐ…… もぐ…… もぐ………

そして、突然、全力で叫ぶ。

「これ、ぎょーざ???」

リビングの空気が一瞬止まって、次の瞬間、男子全員が吹き出す。

ヤンチャ君 「おいおい!餃子入りおにぎりってなんだよ!」

ユウキ 「女子、絶対わざとだろこれ!」

壮太は笑いながらタツキの背中をさする。

「タツキ、餃子好きだもんね……よかったね……」

タツキは餃子を口に入れたまま、嬉しすぎてその場でぴょんぴょん跳ねる。

「ぎょーざ!ぎょーざ! おにぎりのなかに、ぎょーざ!!」

女子はリビングの端でくすくす笑っている。

サキ 「当たったね、タツキくん。」

カヨ 「餃子は当たりだよ。」

エミ 「タツキくん、喜ぶと思って入れた。」

タツキは餃子を飲み込んで、満面の笑みで叫ぶ。

「これ、ふじさんの、ぎょーざ!!」

男子も女子も笑って、リビングがまた一気に明るくなる。

 

大騒ぎして疲れたのか、いつの間にかみんなそのまま雑魚寝してしまった。

リビングは、おにぎり騒動の余韻でまだ少し温かかった。

タツキは餃子おにぎりを抱えたまま、壮太の膝に頭を乗せて、そのまま眠ってしまった。

ヤンチャ君はソファに倒れ込んで、片足だけ床に落ちている。

ユウキは義足を外して横になり、そのまま静かに寝息を立てている。

カヨはタツキの近くに座ったまま、気づいたら壁にもたれて眠っていた。

エミはトレイを片づけようとして、途中で力尽きてテーブルに突っ伏している。

サキは毛布を取りに行こうとして、戻る途中で床に座り込んで寝てしまった。

誰も「寝よう」と言っていない。誰も「片づけよう」と言っていない。

ただ、遊びの勢いのまま、安心のまま、その場で眠ってしまった。

それが雑魚寝。それがこの施設の「家族の形」。

 

リビングはまだ薄暗くて、みんなの寝息が静かに重なっていた。

タツキはぱちっと目を開けて、しばらく天井を見つめていた。

昨日の餃子おにぎりの余韻が残っているのか、口元が少し笑っている。

ゆっくり起き上がると、周りを見渡す。

壮太はタツキの近くで横向きに寝ていて、ヤンチャ君はソファから半分落ちていて、

ユウキは義足を外したまま静かに眠っていて、

女子たちも壁にもたれたり、テーブルに突っ伏したりして眠っている。

 

タツキはしばらくみんなを見て、ふふっと笑った。

そして—— 昨日の騒ぎの中で誰かが置きっぱなしにした おもちゃのラッパ を見つける。

タツキはそれを手に取って、いたずらっぽく目を細めた。

次の瞬間。

「ぷおおおおおおおおおおおお!!!」

リビングの空気が爆発した。

ヤンチャ君 「うわああああああああああ!!」

壮太 「タツキ!?!?!?」

ユウキ 「ちょっ……耳……!」

サキ 「えっ……なに……朝……?」

エミ 「心臓止まるかと思った……」

みんなが飛び起きて、一斉にタツキを見る。

タツキはラッパを抱えたまま、床の上で転げまわって笑っている。

「みんな、おきたーーー!! ぷおおおおおおおお!!」

ヤンチャ君は頭を抱えながら叫ぶ。

「タツキ!朝からラッパは反則だろ!!」

壮太は笑いながらタツキを抱き寄せる。

「タツキ……びっくりしたよ……でもおはよう……」

ユウキは耳を押さえながら苦笑い。

「タツキくん、起こし方が戦争なんだよ……」

女子は半分寝ぼけながらも笑っている。

サキ 「もう……かわいいけど……うるさい……」

エミ 「でも……なんか……幸せな朝だね……」

タツキはラッパを掲げて叫ぶ。

「きょうも、ふじさんつくるーーー!!」

リビングがまた一気に明るくなる。

 

ラッパで叩き起こされたあと、みんなはまだ半分寝ぼけながら食堂へ向かう。

ヤンチャ君は髪が爆発している

壮太はタツキの手を引きながら歩いている

ユウキは義足をつけながら「朝から戦争だったな…」とぼそっと言う

サキは「タツキくん、朝は静かにね…」と優しく注意

カヨはまだ眠そうでふらふら

エミは「お腹すいた…」と小声で言う

そしてタツキは、もうすでに“今日の富士山”を作る気満々で、食堂に入った瞬間にテンションが上がる。

 

タツキはごはんの前に立って、スプーンを握りしめて宣言する。

「きょうのふじさん、つくるーーー!!」

昨日の成功体験が強烈に残っているから、タツキの中では 「食事=ふじさんの時間」 になっている。

でも、みんなはさすがに止める。

 

壮太

「タツキ、朝はね……ふじさんじゃなくて、ちゃんと食べる時間だよ。」

サキ

「昨日のふじさんは“夜のイベント”だからね。朝は静かに食べよう?」

ヤンチャ君

「タツキ、朝から山作ったら、またみんな寝ちゃうぞ!」

ユウキ

「朝はね、ふじさんじゃなくて“エネルギー補給”なんだよ。」

カヨ

「ふじさんは……夜のほうが楽しいよ?」

エミ

「タツキくん、朝はふじさん休みだよ。」

 

みんなが口々に優しく言うと、タツキはスプーンを持ったまま、むーっと頬をふくらませる。

「ふじさん……つくりたい……」

壮太がしゃがんで、タツキの目線に合わせて言う。

「じゃあね、朝は“ちいさいふじさん”にしよう。“おおきいふじさん”は、夜の楽しみにとっておこう。」

タツキはぱっと顔を上げる。

「ちいさいふじさん? よる、おおきいの?」

壮太 「そう。朝はミニふじさん。夜はスペシャルふじさん。」

タツキはスプーンを握りしめて叫ぶ。

「じゃあ、ちいさいふじさんつくるーーー!!」

みんなは笑って、 「それならいいか……」 と納得する。

 

みんなが朝ごはんを食べ始めている中、タツキはこっそり自分の皿の上で「ちいさい富士山」を作っていた。

昨日の巨大富士山とは違って、今日は手のひらサイズのかわいいやつ。

てっぺんにちょこんとふりかけが乗っていて、形も少しゆがんでいるけど、タツキの中では完璧な富士山。

作り終わった瞬間、タツキはぱあっと笑って、スプーンを持ったままみんなの方へ向き直る。

「みてーーー!! ちいさいふじさん!!」

壮太はすぐに気づいて、優しく笑う。

「タツキ、上手だね……朝はミニ富士山だね。」

ヤンチャ君は口にパンを入れたまま叫ぶ。

「おいおい、もう作ってんのかよ! でもかわいいじゃん!」

ユウキは苦笑しながらも嬉しそう。

「タツキくん、朝から芸術家だね。」

女子たちもくすっと笑う。

サキ 「昨日のよりかわいいね。」

カヨ 「朝はこれくらいがちょうどいいよ。」

エミ 「タツキくん、ほんとに好きなんだね……ふじさん。」

タツキは胸を張って、得意げにミニ富士山を掲げる。

「これ、タツキの“あさのふじさん”!! よるは、おおきいのつくる!!」

みんなが笑って、食堂の空気がまた一段階あたたかくなる。

 

みんなが笑って褒めてくれる中、壮太はそっとタツキの隣に座る。

タツキはまだ富士山を見つめていて、食べる気はまったくなさそう。

壮太は少しだけ首をかしげて、優しく声をかける。

「タツキ…… 朝ごはんだからね。ふじさんも、食べよう?」

タツキはミニ富士山を見て、壮太を見て、ちょっとだけ困った顔をする。

「……これ、なくなる?」

壮太はゆっくり笑って、タツキの手をそっと包む。

「なくならないよ。タツキの中に入るんだよ。昨日みたいにね。」

タツキは少し考えて、ふじさんを見つめて、やがて小さくうなずく。

「タツキのなかに……くる?」

「うん。朝のふじさんも、タツキの力になるよ。」

タツキはスプーンを持ち直して、てっぺんをひとくち食べる。

そして—— ぱあっと笑う。

「ふじさん、タツキのなかーーー!!」

みんながまた笑って、食堂の空気がさらにあたたかくなる。

朝ごはんを食べ終えたあと、食堂の空気はゆっくりと“生活の時間”に戻っていく。

ヤンチャ君は食器を片づけながら大きく伸びをして言う。

「よし、オレはそろそろ帰るわ。昨日の騒ぎで体バキバキだしな!」

サキ 「来てくれてありがとうね。また書類のときお願いするよ。」

ヤンチャ君 「任せろ!次はもっと騒ぐぞ!」

壮太 「騒がなくていいんだけどね……」

タツキは走ってきて、ヤンチャ君の足に抱きつく。

「ヤンチャーーー!!またくるーーー!!」

ヤンチャ君は笑ってタツキの頭をぐしゃぐしゃにする。

「おう!またな、タツキ!」

そして、 玄関で靴を履きながら最後に振り返る。

「夜の巨大ふじさん大会、楽しみにしとけよ!」

そのまま元気よく帰っていく。

 

ユウキは義足をつけ終えて、軽く足踏みして感触を確かめる。

「じゃ、練習行ってくる。」

壮太 「気をつけてね。」

サキ 「無理しないでよ。」

ユウキは少し照れたように笑って言う。

「大丈夫。昨日の騒ぎで体ほぐれたし。」

タツキはユウキの義足をぽんぽん叩いて言う。

「ユウキ、がんばれーーー!!」

ユウキはタツキの頭を軽く撫でて、静かに玄関へ向かう。

その背中は、昨日の騒ぎとは違う、「自分の世界へ向かう背中」。

みんなが自然に“自分の作業”へ散っていく。

 

タツキは壮太の袖をぎゅっとつかむ。

「壮太、はみがきいく。」

壮太は優しく笑って、タツキの頭を軽く撫でる。

「うん、行こう。ごはんを食べたら歯磨きだね。」

タツキは嬉しそうにスキップしながら、壮太の手を引いて洗面所へ向かう。

 

洗面所は朝の光が差し込んでいて、鏡が少し曇っている。

タツキは歯ブラシを取り出して、壮太の方を見て得意げに言う。

「タツキ、じょうずにできるよ。」

壮太は笑ってうなずく。

「昨日のふじさんも上手だったし、歯磨きもきっと上手だよ。」

タツキは嬉しそうに歯ブラシを口に入れて、ごしごしと磨き始める。

途中で鏡に映った自分の顔を見て、なぜか笑い出す。

「タツキ、はみがきのかお、おもしろい!」

壮太もつられて笑う。

「うん、ちょっと面白いね。でもきれいに磨けてるよ。」

タツキは満足そうにうなずいて、最後に勢いよく口をゆすぐ。

「タツキ、きれいになったーーー!!」

歯磨きを終えて、タツキは口をぺろっとして満足そうに笑っていた。

壮太はタオルを片づけながら、タツキの方を向いて、少しだけ首をかしげる。

「タツキ、このあと何がしたい?」

タツキはその言葉を聞いた瞬間、目をまん丸にして固まる。

“何がしたい?”という問いは、タツキにとって「自分の世界を選んでいい」という合図。

タツキにとっては「自分で選べる」のは初めてのことだった。

タツキは洗面所の鏡を見て、壮太を見て、天井を見て、また壮太を見る。

そして—— 胸を張って叫ぶ。

「タツキ、あそぶ!!」

壮太は笑ってうなずく。

「うん、遊ぼう。どんな遊びがしたい?」

タツキは少し考えて、指を一本立てる。

「ふじさん……は、よる。 あさは……あそぶ!!」

壮太は優しく笑って、タツキの頭をぽんと撫でる。

「じゃあ、朝の遊びをしようか。タツキの好きなやつでいいよ。」

タツキは嬉しそうにスキップしながら、リビングへ向かっていく。

「タツキ、あさのあそびーーー!!」

2026/08/18

タツキの物語(俊の記憶) 第3回

3章 タツキの登場(タツキ:11歳・知的障害、精神年齢・5歳)

僕が18歳になり、モジュールが完成に近づいたころ、聴覚障害の人には視覚情報と同時に振動などの体感情報もあったほうがいい。

その体感情報のチェックに向いているとヤンチャ君が紹介してくれたのが、タツキという少年だった。

知的障害があって、精神年齢は5歳くらいだと聞いた。

どういういきさつでヤンチャ君とタツキが出会ったのかはわからないけど、細かいことは気にしないでおこう。

 

最初タツキはヤンチャ君の後ろに隠れて出てこなかった。

僕たちを怖がってる感じだった。

僕たちもどう接したら良いかわからなくて何もできなかった。

しばらくそんな感じでぎこちなかったんだけど、タツキはヤンチャ君の言うことは素直に聞く感じに見えた。

それで、モジュールの体感情報のチェックを実際にやってもらったんだ。

 

タツキは振動のタイプによって、不快感を示したり、大喜びしてはしゃいだりする。

それをみて僕たちもタツキと一緒にいるのが楽しくなってきた。

タツキの反応を見ながら調整を続けていくうちに、カヨのモジュールはようやく完成が見えてきた。

振動の強さや種類をどう感じるかは人によって違うけれど、タツキの素直な反応が、僕たちにとって一番の指標になった。

 

そんな頃、ユウキが義足の調整で外に出ることが増えてきた。

翻訳の仕事で世界とつながっていた彼が、今度は自分の足で世界に戻ろうとしているのが嬉しかった。

 

ある日、ユウキが施設の裏の坂道で、段差につまずきそうになった。

僕が息をのんだ瞬間、ハルトが言った。

「……これ、僕のモジュールと連動できるかもしれない。危ない場所では足が前に出ないようにする仕組み、作れると思う。」

その言葉を聞いた瞬間、胸が熱くなった。

ユウキの“歩く怖さ”を、僕たちの技術で減らせるかもしれない。

カヨのモジュールが完成に近づいている今、次に取り組むべきものが自然と見えてきた気がした。

 

ハルトの言葉を聞きながら、僕はふと思った。

ユウキだけじゃない。

これは視覚障害の人自身の歩行にも使えるんじゃないか。

見えないことで足を踏み出すタイミングを誤る危険は、ハルトがいつも抱えているものだ。

もし、危険な場所では義足や靴が“足を出さない”ようにできたら—— 歩行そのものが、もっと安全になる。

ユウキのための発想が、ハルト自身の未来にもつながる気がした。

2026/08/18

タツキの物語(俊の記憶) 第2回

2章 ハルトとの出会い(15歳)

僕が15歳のとき、ハルトという視覚障害の少年が施設にやってきた。

あのモジュールが彼にも使えるんじゃないかと思い、ハルトに自分の作ったものを紹介した。

ハルトは少し引っ込み思案なところがあるけど、そのモジュールを喜んでくれた。

そして、「見えないならそれをアシストするモジュールを作ればいいんだね」ってことを言い出すから、

2人で新たなモジュールを作ることになった。

 

ハルトと一緒に作業する時間は、僕にとって初めて「誰かと学ぶ楽しさ」を感じた瞬間だった。 

講師の方にアドバイスをもらいながら、2人で試行錯誤しながら取り組んだ。

カメラやセンサーの選択にもこだわった。

そして1年後、見えなくても周囲の状況を音で伝えてくれるモジュールが完成した。

 

施設の関連企業で製品化の話になって、ヤンチャ君が特許は俊とハルトのものだという条件を通してくれた。

これで、僕たちはあくせく働いて稼がなくても、特許収入というもので生きていけるらしい。

リリースされた製品は日本国内だけではなく、海外でも注目されるようになった。

取説の翻訳が必要ってなったときに、交通事故で片足をなくして施設の自室にひきこもっていたユウキが名乗り出てくれた。

彼は自分の姿を見られたくなくて部屋ごもりしていたんだけど、海外の人たちとつながって色々な国の言葉を覚えたらしい。

部屋にこもってるだけだと思っていたユウキが、世界とつながっていたなんて思いもしなかった。

翻訳はユウキにお願いすることになった。

ネイティブチェックはユウキの海外の友人たちがやってくれるみたいだ。

 

製品が世界に広まっている中、カヨという聴覚障害の女の子がやってきた。

僕より4つ下らしい。

引っ込み思案のはずのハルトがなぜか積極的で、

「僕の発明は、目の代わりに音で伝えてくれるものだけど、これを応用すれば、音を視覚情報で教えてくれるものになるんじゃないかな?」

なんてアピールしてた。

これ、僕がハルトが来た時に、自分の製品を紹介したかったのと同じなんだろうなぁ。

 

そしてカヨも一緒に、今度は聴覚障碍者のためのモジュールを作ることになった。

その頃、ユウキはスポーツに復帰したくなったみたい。

筋トレや義足調整で装具メーカーの人と会ったりして、外に出かけることが増えてきた。

 

それからカイという吃音の少年がやってきた。僕より2歳年下らしい。

カイは吃音をイジラレて不登校になり、この施設に来たようだ。

でも、すごく声が良くて、音楽に向いているんじゃないかって話をしていたところ、

たまたま施設を訪問していた企業の人からCM依頼を受けたんだ。

吃音を活かしたCMソングを作るとかって話が聞こえた。

2026/08/18

タツキの物語(俊の記憶)第1回

第1章 施設に来た頃(12歳の俊)

僕が“Let it go”という施設に来たのは12歳の時だった。

名前の意味は「ありのままに」だそうだ。

社会で受け入れられない子どもたちが「そのままの姿で生きられるように」、

そんな願いを込めてつけられた名前だと後で知った。

空気を読んで自分を殺して生きるしかなかった僕にとって、

その言葉はまるで別の世界への入口みたいに聞こえた。

 

ディスレクシアの僕は学校では文字が読めないことで周囲からバカにされ、当時は不登校だった。

両親が知人から聞いて連れてきてくれたのが、この施設に入るきっかけだった。

一応ディスレクシアについて説明しておく。

普通の人には整然と並んでいる文字が、僕には踊っていたり重なって見えたりする。

脳の認知の問題らしい。

 

この施設では、寮費の代わりに朝の農作業をすることになっていた。

それから食事の時間は決まっていたけど、それ以外はどんな風に過ごしても良いことになっていた。

最初、僕は何をしてよいかわからなかったんだけど、そういう子たちのために、

施設の人が色々と興味の持てそうなことを紹介してくれる。

具体的に学びたいことがある子のために外部から講師を呼んでくれたりもする。

 

僕は、サキたちが船を作るというので仲間に入れてもらった。

それが僕のこの施設での最初の活動。

その後はドローン作りを通して、はんだ付けや電子機器、パソコンについて学んでいった。

 

その頃はまだ施設のみんながそれほど仲がよいわけでもなかった。

みんな好き勝手にやりたいことをやってる。

でも、後にこの施設で出会う一人の少年が、僕の世界を大きく変えることになるなんて、想像だにしていなかった。

 

ある日、ふと、読めないなら読み上げてくれるモジュールを作ろうと思った。

そしてプログラミングについて学んでいった。

プログラミングの講師を施設に紹介してもらったけど、先生は答えは教えてくれない。

答えにつながるヒントや調べ方を教えてくれるだけだ。

僕は思い通りにいかなくてやきもきした。

何度も失敗を繰り返して、投げ出そうと思ったことも何度もある。

でも、よくわからないけど、やめてはいけない気がして続けた。

 

そして、プログラミング自体はさほど高度なものではないなりに、

望む機能を実現するモジュールが完成した。

すごくうれしかった。みんながほめてくれた。

製品化しようということになって、系列のリブート・ハウスという施設出身のヤンチャ君という若い弁護士が、

企業との間に入ってくれたりして、特許の手続きをしてくれた。

 

ここで、リブート・ハウスとヤンチャ君について少し説明すると・・・

リブート・ハウスっていうのはいわゆる「不良少年」を更生させる施設みたいなところで、

ヤンチャ君はそこでも一番の悪だったらしい。

ところが、ひょんなことがきっかけで、ヤンチャ君は弁護士を目指すことになったらしく、

中学卒業後16歳で予備試験に合格、その翌年に司法試験にも合格して、その後司法修習に行き、

18歳で弁護士登録したらしい。

それだけでもスゴイみたいなんだけど、もっと驚くのは、

弁護士登録すると同時に結婚して、24歳で8児の父親なんだって。

そんなスゴイ人が僕たちの味方でいてくれるなんて、正直まだ信じられない。

2026/08/12

身体株式会社 第18回 夏バテ改善プロジェクト編

キアラ:

「は〜い、みんな集まって〜! 今日から身体株式会社は “夏バテ改善プロジェクト” を始めま〜す!

もうね、社内の空気がダルダルで、キアラも歩くたびに『あつ〜』って言っちゃうから、

ここらで本気出して立て直すよ〜!」

第1章:脳部のやる気復活作戦!

脳部さん:「暑いと考えるのめんどくさいんだよね〜」

キアラ: 「脳部さん、まずは冷却だよ〜! ほら、冷たいタオルと涼しい風〜!

あとね、糖分と塩分をちょっと補給すると、指令がシャキッとするんだよ!」

脳部さん:「あ、なんかちょっと元気出てきたかも…?」

 

キアラ: 「でしょ〜!?脳部さんが元気だと会社が回るんだよ〜!」

第2章:消化課の“夏バテメニュー改善”会議!

胃課さん:「冷たいものばっかり来るんだけど〜!」

腸課さん:「栄養が薄いよ〜!」

 

キアラ: 「じゃあね、冷たいものは“ちょっとだけ”にして、 温かいものを少し混ぜていこ〜!

あと、タンパク質とビタミンは夏バテ改善の主役だよ〜!」

 

胃課さん:「あ、これなら処理できるかも〜!」

腸課さん:「在庫も増えてきた〜!」

第3章:エネルギー管理部の“出力回復プラン”!

エネルギー管理部:「燃料不足で省エネ運転中です〜」

 

キアラ: 「じゃあ、燃料(栄養)をちゃんと届けるからね!

あと、水分と塩分のバランスを整えると、出力が戻るんだよ〜!」

 

筋肉部門:「力入ってきた〜!」

免疫課:「守りが強くなってきた〜!」

 

キアラ: 「いいね〜!会社が元気になってきたよ〜!」

第4章:水分・塩分管理課の“バランス会議”!

発汗課:「汗で全部出ていく〜!」

水分課:「水は来るけど塩分が来ない〜!」

 

キアラ: 「じゃあ、塩分ちょっと足そう〜!

水だけだと薄まっちゃうから、塩分とミネラルをセットでね〜!」

 

循環課:「血液が安定してきた〜!」

 

キアラ: 「よしよし〜!これで循環もスムーズだよ〜!」

第5章:睡眠課の“快眠プロジェクト”!

睡眠課:「暑くて寝付けないんですけど〜!」

 

キアラ: 「じゃあ寝る前に部屋を冷やして、 スマホはちょっと遠くに置いて、 水分は少しだけにして、 体温を下げる準備をしよ〜!」

 

回復課:「材料がそろってきた〜!」

脳部:「眠気がスッキリした〜!」

 

キアラ: 「睡眠課が元気だと、翌日の会社がめちゃくちゃ元気になるんだよ〜!」

最終章:全社アナウンス!

キアラ: 「みんな〜!夏バテ改善プロジェクト、順調だよ〜!

部署ごとのズレが少しずつ整って、 身体株式会社がまた元気に動き始めてるよ〜!」

 

全社:「おお〜〜〜!!」

 

キアラ: 「この調子で、夏を乗り切ろ〜! キアラも応援してるからね〜!!」

2026/08/12

身体株式会社 第17回 夏バテ編

やっほ〜!身体株式会社・案内係のキアラだよ〜!

今日はね、みんなを “夏バテ中の身体株式会社” にご案内するよ!

もうね、社内がぜ〜んぶ、じわ〜っとダル〜っとしてて、 どの部署も「え〜暑い〜やる気出ない〜」って言ってるの。

キアラも暑いの苦手だから、のど乾いた〜って言いながら案内するね!

まずは司令塔の脳部さんに行ってみよっか!

脳部さん、いつもはキビキビしてるのに、 今日はデスクにぐで〜っとしてるの。

「暑いとさ〜、考えるのめんどくさくなるんだよね〜」 って、やる気低下課の人がぼそっと言ってるの。

そのせいで他の部署への指示も 「まあ、適当にやっといて〜」みたいな感じになっちゃってる。

キアラ: 「ちょ、ちょっと脳部さん!それじゃ会社まわらないよ〜!」

次は消化課!胃腸部さん、どうかな〜?

胃課さん:「冷たいものばっかり来るんだけど〜!?」

腸課さん:「栄養が薄いよ〜!在庫足りないよ〜!」

 

もうね、みんなで冷たい飲み物の段ボールを前に

「これ、仕事にならないんだけど…」って会議してるの。

キアラ: 「わかる〜!冷たいものおいしいけど、胃腸部さんは大変なんだよね〜!」

エネルギー管理部は“省エネモード”に突入!

「燃料不足なので、全社的に出力を落とします〜」 ってアナウンスが流れてるの。

筋肉部門:「力入らないんだけど〜!」

免疫課:「人手不足で守り弱いよ〜!」

 

キアラ: 「みんな、がんばって〜!でも無理しないで〜!」

水分・塩分管理課は大混乱!

発汗課:「汗で全部出ていくんだけど!」

水分課:「水は来るけど塩分が来ない〜!」

循環課:「血液が薄いよ〜濃いよ〜忙しいよ〜!」

 

もうね、会議室が湿度100%みたいな空気になってるの。

キアラ: 「え〜ん、のど乾いた〜!誰か塩分ちょうだい〜!」

循環課は外回りでヘトヘト〜!

「皮膚冷却のために血流回してるけど、もう限界〜!」 って心臓課さんが残業してるの。

そのせいで脳部への血流が減って、 脳部さんはさらにぼんやり…。

 

キアラ: 「循環課さん、ほんとお疲れさま〜!アイスあげたい〜!」

睡眠課は夜勤続きで不満爆発!

「暑くて寝付けないんですけど!」

「寝ても浅いんですけど!」 って、睡眠課の人たちが会議室でぐったりしてるの。

回復課:「材料が足りないよ〜!」 脳部:「眠い…」

 

キアラ: 「みんな、ちゃんと寝よ〜!寝ないとキアラも元気出ない〜!」

まとめ:夏バテは“全社的スランプ”だよ〜!

どの部署も、ちょっとずつズレて、 ちょっとずつ疲れて、 ちょっとずつやる気がなくなっていく。

その結果―― 身体株式会社は“なんとなく調子が出ない”状態に突入しちゃうの。

 

キアラ: 「でもね、ちゃんとケアすれば、また元気な会社に戻れるよ! キアラも応援してるからね〜!」

2026/07/31

身体株式会社 第16回 浄化本部 トラブル編

やっほ〜!身体株式会社・案内係の キアラ だよ〜!

今日はついにお待ちかねの……

浄化本部・トラブル編ツアー

はじまるよ〜〜〜!!!

肝臓課と腎臓課ってね、ふだんは静か〜に働いてるんだけど、

トラブルが起きると一気に社内がバタバタしちゃうの。

今日はその「事件簿」をキアラが案内しちゃうね!

トラブル①:肝臓課、突然の“残業地獄”事件

【原因】

大量のアルコールが消化器部から搬入される。

【現場の様子】

肝臓課の社員さんたちが 「え、今日そんなに飲む予定だった?」

「残業確定じゃん……」 って顔しながら、解毒ラインをフル稼働。

脂質管理係は 「アルコールの分解で手いっぱいなのに、脂肪も来るの!?」 と半泣き。

糖代謝係は 「血糖値の調整もあるんですけど〜〜〜!」 と叫んでる。

【結果】

肝臓課の疲労がピークに達し、 全社の血液品質がちょっと乱れちゃう。

キアラは差し入れにスポドリ持っていったけど、 「水分は腎臓課に回して」って言われたよ〜。

 トラブル②:腎臓課、フィルター係の“怒りのストライキ”

【原因】

水分不足。 (腎臓課がいちばん嫌うやつ)

【現場の様子】

糸球体係が 「水が足りません。フィルター回りません」 とストライキ宣言。

尿細管係は 「再吸収の計算が狂うんですけど!?」 と大慌て。

電解質管理係は 「ナトリウムとカリウムのバランスが崩れる〜〜〜!」 と泣き叫ぶ。

【結果】

腎臓課の処理能力が低下して、 老廃物が血液部に戻りかけるという大事件。

キアラが水筒持って走っていったら、 腎臓課の社員さん全員から拍手されたよ〜!

 トラブル③:肝臓課と腎臓課の“責任押し付け合い会議”

【原因】

血液の品質が乱れたとき。

【会議の様子】

肝臓課 「うちの品質管理は完璧です。腎臓課のフィルターが甘いのでは?」

腎臓課 「いやいや、そもそも肝臓課の加工が雑なんですよね?」

肝臓課 「加工はしてます。あなたたちが水分不足でサボってるだけでは?」

腎臓課 「水分不足は全社の問題です!」

キアラ 「ケンカしないで〜〜〜!!」

【結果】

最終的に心臓部が仲裁に入り、 「どっちも大事だから協力しろ」 と一喝して解決。

 トラブル④:膀胱課の“満杯アラート”鳴りっぱなし事件

【原因】

腎臓課が頑張りすぎて尿を大量生産。

【現場の様子】

膀胱課 「ちょっと!容量オーバーです!早く出荷して!」

尿道係 「いや、タイミングがあるんですよ!」

腎臓課 「知らないよ!老廃物は溜められないんだから!」

【結果】

全社に「トイレ行って!」アラートが鳴り響く。

キアラ 「早く行ってあげて〜〜〜!」

キアラのまとめ

浄化本部ってね、 ふだんは静かで淡々としてるけど、 トラブルが起きるとめちゃくちゃドラマがあるの。

肝臓課は「品質管理の鬼」 腎臓課は「フィルター職人」

この2つが協力してくれてるから、 身体株式会社は毎日ちゃんと動いてるんだよ〜!

2026/07/31

身体株式会社 第15回 浄化本部

やっほ〜!身体株式会社・案内係の キアラ だよ〜!

今日はね、みんなを 「腎臓課と肝臓課の大冒険ツアー」 に連れていくよ〜!

熱中症の案内と同じテンションで、フィクションの世界観として楽しんでね。

身体株式会社・浄化本部へようこそ〜!

ここはね、身体株式会社の中でも “静かに命を守るプロフェッショナル集団” が働いてる本部なんだ。

今日はその中でも、 肝臓課(品質管理センター)腎臓課(浄水場センター) にご案内するよ〜!

 キアラの案内①:肝臓課に潜入してみよ〜!

やっほ〜!ここが 肝臓課 のフロアだよ〜!

入った瞬間わかると思うけど、 ここ、めちゃくちゃ忙しいの。

社員さんたちが黙々と働いてて、空気がピリッとしてるんだよね。

肝臓課ってどんな部署?

「全社の品質管理センター」 だよ!

血液がどんどん運ばれてきて、 肝臓課の社員さんたちがこんな仕事をしてるの:

  • 有害物質を解毒
  • 栄養を再加工
  • 脂肪や糖のバランス調整
  • アルコールや薬の処理
  • 血液の成分を整える

まさに “影の総務部長” って感じ。

 肝臓課の社員さんの性格

  • 無口
  • 仕事量が多くても弱音を吐かない
  • ちょっと職人気質
  • 「気づいたら全部整ってる」タイプ

キアラはね、ここの空気に入ると 「うわ〜、プロの現場だ〜」って背筋が伸びるんだよね。

 キアラの案内②:腎臓課にも行ってみよ〜!

さぁ次は 腎臓課 に移動するよ〜! ここはね、肝臓課とはまた違う静けさがあるの。

 腎臓課ってどんな部署?

ここは 「血液の浄水場」 だよ!

肝臓課で品質管理された血液が送られてきて、 腎臓課の社員さんがさらに細か〜くフィルタリングするの。

  • 老廃物の回収
  • 水分量の調整
  • 電解質バランスの管理
  • 血圧の微調整
  • 尿の原液づくり

めちゃくちゃ繊細な仕事なんだよ〜!

 腎臓課の社員さんの性格

  • 几帳面
  • 静か
  • 水分不足にすぐ怒る
  • 「職人フィルター係」って感じ

キアラがちょっと喋りすぎると 「静かにしてもらえます?」って言われちゃうんだよね〜(てへっ)

 浄化本部の全体像を見てみよ〜!

浄化本部 ├── 肝臓課(品質管理センター)

│ ├── 脂質管理係

│ ├── 糖代謝係

│ ├── 薬物処理係

│ └── 血液成分調整係

│ └── 腎臓課(浄水場センター)

├── 糸球体係(フィルター)

├── 尿細管係(再吸収)

├── 尿管係(物流)

├── 膀胱課(保管)

└── 尿道係(出荷ゲート)

 キアラのひとこと

肝臓課と腎臓課ってね、 同じ「浄化本部」にいるけど、 役割も性格もぜ〜んぜん違うの。

でもね、 この2つが仲良く連携してくれてるから、身体株式会社は毎日ちゃんと動いてるんだよ〜!